有機JASは誰のためにあるのか

無農薬で育てられた野菜 = 有機野菜。
そういう認識の方はたくさんおられると思います。
この解釈についての間違いは別の記事で書いていますのでそちらをご参照ください。
    詳しくはarrow070_01有機野菜と無農薬野菜の違い
今回は、国の法律”有機JAS法”によって定められている有機野菜という呼びかたについて深く掘り下げていきます。
これを読んでいただければ、
有機JASはだれのためにある法律なのか。
有機JASで誰が得をするのか。
といったことが分かるようになります。
が、今回はけっこう堅苦しい話が多くなります。
もし結論だけ知りたければページの最後のあたりだけ読んでください。
簡潔にまとめてあります。

 

有機JAS法とはなにか

JASマーク

有機野菜という名称は、 国(農林水産省)の法律”有機JAS法”というもので表示が制限されています。
有機JAS法の基準を満たしていなければ、有機野菜と表示して売ることができないということです。
ということは逆にいえば、有機JAS法の内容を知れば、有機野菜がどういうものなのかが分かるわけです。
まずは、農林水産省のホームページに掲載されている有機JAS法の内容について・・・・書いてしまうとけっこうなボリュームになってしまいますのでやめておきます。
ごくごく簡単に、ある程度要約すると下記のようになります。

———————-
【有機JAS法】
 化学農薬、化学肥料および化学土壌改良材を使用しないで栽培された農産物、および必要最小限の使用が認められる化学資材を使用する栽培により生産された農産物で、化学資材の使用を中止してから3年以上を経過し、堆肥等による土づくりを行なったほ場で収穫されたもの。
———————-

まだ分かりにくいですね。
もっとかみ砕いて書きます。
農薬や化学肥料を3年以上使っていない畑で収穫されたもの。
ただし法律で認めている農薬もあります。
これくらい訳すとようやく分かってきます。
かなりざっくり訳しているので細かい条件は反映されていませんが、だいたいこのような法律なんだということが分かれば大丈夫です。

 

有機JAS法ができるまでの経緯について

世界的に安心・安全への関心が高まる中、1992年、日本では農水省が有機農産物等ガイドラインを作成しました。
でも。
基準や認定方法が曖昧なことに加えて、とくに規制や罰則もなく誤解を招くような表示も多くありました。
例えば。
有機栽培で作りましたといって「有機野菜」と表記していたとします。
今なら有機野菜と書かれていれば「無農薬でしかも無化学肥料で育てられているんだな」と明確に判断できます。
でも当時は、「無農薬」で栽培していても、実は「化学肥料」を使っていたなんてことは当たり前のようにあったのです。
有機減農薬とか有機低農薬とか、よくわからない表記も多く見られました。
とにかく法的な規制がないため「売れる!」と思った表記を自由にできるような混沌とした状況でした。
消費者はこれで「有機野菜ってなに?どんな基準なの?」と混乱しました。
また、ガイドラインはあくまでガイドライン、法的な規制がなくて表示も任意だったせいで消費者に不信感を与えてしまいました。
混乱と不信感。
食に関わる現場で消費者の不安をあおるようなことがあっていいはずがありません。
そこで適切な表示への見直しを測ろうということで、日本でも2001年4月に有機JASで有機農産物・加工食品の基準を明確にしたというわけです。

と、ここまでの有機JAS法ができた経緯を考えれば、あいまいな表記によって不信感を持っていた消費者のためにつくられた法律であることがわかります。
こういう栽培をしていればこういう表記ができます。
この資材を使うのであれば、このように表記して下さい。
と栽培方法や使用資材によって食品に表示される文言が決められたんですから、消費者からみれば購入するときに判断しやすくなりました。

でも。
消費者のためにつくられた法律・制度の裏側では、これによって苦しんでいる人がいることを忘れてはいけません。

 

 

有機認証制度について

その苦しんでいる人とは、ずばり生産者。
つまり農家です。
有機JASは農家のためになっているのか、これがあることでメリットを感じているのか、という問題があります。
有機JAS法により、確かに有機栽培とは言えないような栽培をしている農家・業者を締め出すことには成功したかもしれません。
高く売れるからといって有機減農薬とか有機低農薬と表記してしまうような商売はできなくなりました。
でも、ずっとまじめに有機農産物を作ってきた農家はどうでしょう。
もともと有機JASの基準を満たすような農産物を作ってきた農家はどうでしょう。

有機JASを認定してもらうためには膨大な労力がかかります。
栽培計画書、育苗管理記録、生産管理記録、投入資材リスト・・・作物ごとにとんでもない量の書類を提出しなければなりません。
その労力は、日中くたくたになるまで働いてきた人にとってかなりの負担になります。
栽培管理や生産記録などは農業者であればとうぜん記録しておくべきものですから、まじめにやっている農家であれば元々やっていることかもしれません。
でもそれを、提出用のフォーマットに書き換えたり写し込んだりしなければならない手間がかかります。
ここに費やすエネルギーを、できれば畑に費やしたいというのが農家の本音ではないでしょうか。

さらに、認定にはコストがかかります。
検査員の交通費や滞在費、畑一枚ごとに検査料がかかります。
なぜ農家が、自分の農産物に安全マークを貼れるようにするために、検査員の交通費や滞在費を払う必要があるんでしょうか。
いち農家が払うには負担が大きすぎます。

というように。
有機JASという国のお墨付きマークを農産物に貼るためには、書類作成に多くの手間がかかり、たいへん大きな金銭的負担があります。
だから。
もともと真面目にやっている農家や、有機JASの基準よりも厳しい基準で農産物を提供している農家は、そんなお墨付きマークには魅力を感じないので有機JAS認定をとらないんです。
また、自分の商品に対する信頼は自分で得られるように努力するよという農家にとって、国のお墨付きは必要がないんです。

 

有機JASは誰のために作られたのか

有機JASは言ってみれば水戸黄門様の印籠みたいなものです。
この紋所が目に入らぬか!
のあれです。
権威の象徴であり国のお墨付き。
有機JASマークという紋所が商品に書かれているおかげで、これが国に認めてもらった有機農産物であるぞと主張しているわけですね。
印籠
(画像:ドラマ水戸黄門より)
ということは。
印籠に書かれている紋所を見て
ははぁ~
となる人たちには有効だけど、そもそも国を信じていない人たちにとっては全く意味をなさないマークです。
たしかに、法律そのもの有機JASそのものは消費者の利益になるように作られた制度ですが、生産者にとっては負担になっていたり、実は特定の農薬は使用が認められていたり、検査チェック体制に甘い点が見られたり、不信感をもたれるような要素はいくつかあります。
国が信じられないのであれば、有機JAS認定そのものも信じられないということになってしまいます。

つまり。
国の施策、法律を信じられる人には必要な規格。
国ではなく自分を信じる、信頼できる他人(農家)を信じるという人には必要ない規格
ということです。

 

 

まとめ

今回の話をまとめると次のようになります。
・あいまいな表記で混乱していた消費者のために有機JASはつくられた
・その制度によって消費者は利益を受け、生産者は負担を強いられている
・国そのものを信じられない人にとっては全く意味のない規格

スーパーで有機JASシールが貼られている農産物があれば買ってしまう方もおられると思いますが、それは基本的には消費者のことを考えて貼られているシールです。
国や認証制度に対して不信感があるなら、その人にとっては意味のないマークですが、大多数の人にとっては購入するときの判断基準にできるものです。
マークがついていない農産物にくらべれば多少値段が高くなってしまうことが多いですから、そのマークがついている意味や歴史を知っていると一層ありがたみが出てきますね。
もし手に取ることがありましたら黄門様の印籠を思い出してみてください。

 

 

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