有機肥料と化学肥料 人間だって栄養の摂り方は多様

野菜を選ぶときに農薬を使っているのかどうか、つまり無農薬栽培なのかを気にする方はけっこういらっしゃいます。
でも。
肥料について気にされる方はそれほど多くないように感じています。

とにかく無農薬!という感じです。

一般的に言われている有機野菜はものすごく簡潔に言ってしまえば、
・農薬を使わない
・化学肥料を使わない
この二つの条件を満たした野菜です。
それなのに。
農薬は気にするけど肥料はあんまり気にしない。
そんな傾向があるように感じます。
無農薬野菜 ≠ 有機野菜
にもかかわらず。

今回は。
ほんの少しでいいので肥料についても気にしてほしい、という願いを込めて。
有機肥料と化学肥料との違いについて説明していきます。
野菜にとって肥料ってなに?
肥料ってどんな種類があって、どんな違いがあるの?
といった話が理解できるようになります。
どうぞご覧ください。

肥料とはなんだ

まず最初に。
肥料とはなんですか?
という質問に簡潔に答えるなら
人間にとっての食べ物
という答えになります。
つまり、野菜にとって肥料は命を維持するため、もしくは生長するために必要な食べ物ということになります。
じゃあここで。
有機農業では有機肥料を使う、一般的な慣行農業では化学肥料を使う。
この違いはなんでしょう。
食べ物に違いがあるんでしょうか。
その答えもやはり、人間に例えると分かりやすいんです。

有機肥料とは

有機肥料
(画像参照:家庭菜園での有機無農薬栽培の方法

米ぬか、油粕(あぶらかす)、魚粉、たい肥など。
有機質なものから作られています。
言い換えると、命あるものから作られた肥料ということです。

私たちがふだん口にする普通の食事。
米や野菜、果物、肉、魚など、もしくはそれらを加工したもの。
これらが野菜にとっての有機肥料だと考えてください。
だから、野菜に有機肥料を与えて育てるというのはごく普通の、当たり前の育て方なんです。

ちなみに。
口に入った食べ物は、胃で消化されて腸で吸収します。
しっかりと噛んで細かく砕いておかないと、胃で消化しきれないし腸で吸収しにくくなります。
ようするに、人体は食べものを直接的に吸収できるわけではなく、消化して吸収しやすい形にしてようやく体に取りこむことができるようになるということです。
これは有機肥料でも同じこと。
土に混ざった有機肥料は、そのままでは野菜の根が栄養を吸うことはできません。
肥料を、土にいる微生物が分解して細かくしてようやく根が吸えるようになるんです。

化学肥料とは

化学肥料
(画像参照:家庭菜園での有機無農薬栽培の方法

鉱物など無機質なものから取りだしたもの、もしくは化学的に合成された肥料。
命を持たない無機質なものから作られています。

有機肥料はふつうの食べ物だと先ほど書きました。
では化学肥料はなんでしょうか?
普通じゃない食べ物ってあるんでしょうか。
分かりやすく言ってしまえば、
サプリメントもしくは点滴
といった例えが適切だと思います。
食べ物から作られているというよりは、化学的にあれこれ手を加えてつくられたものです。
その特徴は、人体が直接吸収しやすいようになっているということ。
サプリメントであれば、胃で一生懸命消化しなくても水に溶けてしまえば腸から吸収するのは簡単です。
点滴であれば、胃や腸を通すことなく血液にダイレクトに栄養を送ることができます。

化学肥料もこれに似たようなところがあります。
野菜の根が直接吸える形になっているので、土にいる微生物に分解してもらう必要がありません。
化学肥料を野菜のそばに撒いて、水で溶けさえすれば野菜の根は栄養としてそれを吸うことができるんです。
非常に合理的な、便利な肥料だといえます。

両方をうまく使い分けるとすべてがうまく回る

大豆牛肉サプリ

有機肥料はふつうの食べ物。
化学肥料はサプリメントや点滴。
ここでなにか気づかれた方はおられるでしょうか。
私たち人間は、自身のおかれている状況に合わせて身体に入れるものを変えているということに。
健康なときは、ふつうの食事をしています。
日常的に食べているのは、スーパーで売られているごく一般的な食べ物です。
でも。
なんだか調子が悪いなぁ、最近なんか肌が荒れてきたような気がする、忙しすぎて疲れがたまっているようだ、など体調がすぐれないときってありますよね。
そういうときにはサプリメントを利用することがあります。
足りない栄養を補うという感じでしょうか。
また。
病気になって入院したとき。
手術をした後。
ふつうの食事をするのは大変なときってありますよね。
そんなときは点滴によって栄養をとっています。
一時的に点滴という手段で栄養補給します。

つまり。
私たちは日常生活で、健康状態によって栄養の摂り方を変えているんです。

野菜だって同じこと。
状況に合わせてに使い分けると効果的なんです。
健康にすくすく育っているときは化学肥料なんていりません。
ふつうの食事、有機肥料をベースに育てていけば元気に大きくなっていきます。
でも。
調子を落とすことだってあります。
病気になることだってあります。
そんなときには化学肥料で一時的に栄養を補給してあげる。
有機肥料では吸収に時間がかかるから、弱っているときには化学肥料で助けてあげる。
そうすることで回復が早くなります。

有機農業も慣行農業も、もっと頭を柔らかくすべき

有機肥料と化学肥料。
その使い方はぜんぜん違います。
メインの食事はあくまでも有機肥料。
化学肥料は補助的な役割を担っています。
でも。
一般的な農業では、便利で使いやすいからといって化学肥料に頼っています。
日常の食事まで化学肥料を与えています。
有機農業では、化学肥料は使っちゃいけないと制限をかけて一切認めていません。
調子を崩そうが病気になっても、有機肥料のみに頼った農業をしています。

非常にもったいないことをしているんです。
どちらとも良い面と悪い面があります。
だからこそ、私たちが健康状態に合わせて食事を変えるように、野菜も健康状態に合わせて肥料を変える必要があるんです。
でもその使い分けができていない。
それが現状です。

一般的な農業でももっと有機肥料をたくさん使っていくべきですし、有機農業でも化学肥料を毛嫌いしないで使っていくべきです。
それが野菜にとって最善であることに生産者も消費者も気づかなければならないと思います。

というわけで。
肥料についてあまり気にしていなかった方にとっては知る機会になったかと思います。
もともと肥料についてある程度知っているという方にとっては、偏見をなくす機会になったかもしれません。
少しでも参考になりましたら幸いです。

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