野菜セットの内容がおまかせになっている理由

松本自然農園に限らず、たくさんの種類の野菜を育てて詰め合わせセットという形で発送している、無農薬栽培の有機農家はけっこういます。
農家全体からみれば非常に少ないですし、各都道府県ごとにみてもやっぱり多くはありませんが、全国を見渡せばけっこういるなぁという印象です。
そんな野菜セットを販売している有機農家、らでぃっしゅぼーやとか大地宅配のような大手宅配業者でもそうですが、
野菜セットの内容はおまかせ
定期購入が基本

というところがほとんどです。
送られてくる野菜は選ぶことができないし、欲しいときに注文するのではなく毎週とか隔週とか定期的に送られてくる、という仕組みです。
これってそうとう不親切だと思いませんか?
購入する人のことを第一に考えるなら、
今回はナスとトマトとレタスと大根を買おう、といったいわゆるスーパーでの買い物スタイル
がもっとも親切な販売の仕方ではないでしょうか。
スーパーの野菜売り場に並べられている野菜は、ひとつひとつを手にとって欲しいものだけを買うことができます。
これって非常に便利ですよね。

逆にいえば内容おまかせの定期購入は非常に不便です。
でもこれは、じつは生産者にとっても購入者にとってもメリットがある優れた販売方法なんです。
その理由、実態について詳しく書いていきます。
 

生産者は安心して野菜を育てられる

生産現場からみていくと、なぜ野菜セットになっているのか、なぜお任せなのかがよくわかります。
たとえば、個人の小さい農家がたくさんの種類の野菜をつくって、それをインターネットで販売しているとします。
専用のショッピングサイトがあって野菜を売っています。
それぞれの野菜に購入ボタンがついていて、買いたいものを欲しい分だけ購入できます。
購入者はポチポチと欲しい野菜をカートに入れていくだけ。
簡単で便利です。
スーパーで買い物をするのと変わらない感覚です。

農家側はこういう御注文をたくさん受けて、集計をして、収穫する野菜の量を把握します。
今日はナス40本、トマト20kg、カボチャ10個、レタス25個、水菜3kgを収穫する、というように。
注文を受けた分だけ収穫してきて、調整・箱詰めして、それぞれのご家庭へ発送する。
これを毎日、もしくは定期的に繰り返します。
ここでなにが問題かわかりますか?
 

キャベツ畑
畑では野菜が育っています。
タネまきから収穫まで2ヶ月とか3ヶ月とか、時間をかけて育っています。
注文が入ったから収穫して売る、という単純なことではなくて、いま注文が入ることを予想して3ヶ月前にタネを播くんです。
10月上旬に300個の注文が入ることを予想して、7月10日にキャベツのタネを播く。
ということをするんです。
だから、たとえば10月上旬に200個しか注文が入らなかったとしたら、300個のうち100個は余ってしまいます。
野菜は生長し続けるので、その100個はそのうち収穫する時期をすぎてしまって売りものにならなくなってしまうんです。
こういうことが他の野菜でも起きると、畑では収穫できるのに売り先がない、という悲しい野菜があふれることになります。

新鮮さがウリの野菜は、工業製品のように生産して置いておくことができません。
在庫としてストックしておくことができません。
また、商品になるまでには短いものでも1ヶ月、長いものだと半年以上の時間がかかります。
入ってくる注文の数がわからない状況では、タネを播く量を決めることすら難しいんです。

これが野菜セットになるとどうか。
詰め合わせる野菜の内容が決まっていれば、収穫する野菜の量もおのずと決まってきます。
10月上旬に300件分の野菜セットをつくると分かっていれば、そこに必要な数のキャベツを畑に用意しておけばいいので、7月10日にどれだけタネを播けばよいのかも分かります。
そしてこれは、300個のキャベツを育てれば300個のキャベツが売れる、という形です。
無駄がありません。

さらに、売れ残りがないということは、じつは価格にも影響します。
キャベツを300個つくっても200個しか売れないかもしれない、となると300個分の価格を200個に乗せることになるからです。
300個売れるのであれば1個あたり200円なのに、200個しか売れないかもしれないと思えば1個あたり300円の値段をつけてしまう。
こんなことが起きてしまいます。
つくったぶん全てが売れる、と保証されていることは農家にとっても購入者にとってもよいことなんです。

出荷する数量がわかっているから、数ヶ月前に自信をもってタネを播ける。
畑で売れ残ってしまう野菜がないから、売れ残りを想定して価格を上げる必要がない。

野菜セットがおまかせになっているのにはこんな理由があるんです。

次回は、野菜セットはなぜ定期購入なのかについて書いていきます。

 

 

 

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