消費者目線でみた自然農法とはなにか

とにかく農薬を使わないで育てられた野菜を買いたい。
有機野菜を買いたい。

と考えていろいろ調べているうちに、自然農法という言葉にたどりついた。
そういう人はおられると思います。
知り合いが自然農法の野菜を買っていて、紹介というわけではないけど勧められて存在を知った。
という方もいらっしゃるはずです。
でも。
自然農法という言葉、自然農法で育てられた農産物があることは知ってるけど、自然農法とは一体なんなのか説明できる方はおそらく少ないですよね。
農業者ならともかく、消費者という立場で自然農法について詳しく知っている方は稀だろうと思います。

今回は。
自然農法とはなにか。
どんな特徴があるのか。
どこで買えるのか。
などについて、なるべく分かりやすく書いていきます。
農業者目線で書かれた、よくある小難しい文章ではなく消費者であるみなさんが理解できるように噛み砕いていきます。
ぜひ最後までご覧ください。

農法ってなに?

農法とは

まず最初に。
自然農法について書いていく前に
農法ってなに?
という基本的なことをおさえておく必要があります。

野菜の育て方にはいろいろな方法があって、畑の土を耕すのか耕さないのか、肥料を与えるのか与えないのか、畑に生えてくる草をどのように処置するのか、といった選択肢があります。
そして。
これらの選択肢をどのように選んでいくのかによって、野菜の育て方は変わってくるんです。

たとえば。
土を耕さない、肥料を与えない、草はそのままにしておく、という栽培があったとして。
これを●●農法と呼びます。
土を耕す、肥料を与える、草は取りつくす、という栽培もあります。
こちらは▲▲農法と呼びます。

野菜の育て方についてある程度の定義をもっているものを農法と呼んでいるんです。

料理でいうと出汁の取り方、油での揚げ方、茹で方、炒め方といった調理法の違いだと思ってもらえればいいかもしれません。

●●とか▲▲とか、この部分は提唱者がつけています。
提唱者というのは、土を耕さない、肥料を与えない、草はそのままにしておくといった栽培のやり方を体系的にまとめて世の中に広めようとする人のこと。

では。
自然農法という言葉は誰がつけたものか分かりますか?
当然ですが、誰か名付け親がいなければ自然農法という言葉は生まれてこなかったわけです。

農法というのは、誰かが自分の栽培を世の中に広めようとして自身のやり方を体系化したものです。
つまり、ナントカ農法と唱えた提唱者がいるということ。

提唱者が二人いるという不思議な農法

福岡茂吉

自然農法は、同じような時期に2人の人物が提唱しました。
福岡正信(ふくおかまさのぶ)氏と岡田茂吉(おかだもきち)氏です。
たいていナントカ農法というのは提唱者が一人しかいないのですが、自然農法の場合は不都合なことに二人が同じ名前を使用して自分の農法を主張しています。
本当に同じような時期に、いまほど通信が発達していない頃に命名された農法ですから、かぶっていてもしょうがないと思います。

どちらかが名前を譲ってもよさそうなものですが、いまだ改名の気配すらありません。

まあ、それはそうとして。
私たち農業者の間では、混乱を避けるために
福岡式自然農法
岡田式自然農法

というように言い方を変えたりすることがありますが、みなさんがそこまで厳密に区別する必要はないと思います。
というのは、提唱者が違うとはいえ根本となる考え方は似ているところが多いので、どちらの自然農法だろうが素人目にはあまり違いが分からないからです。

自然農法による栽培の特徴

福岡式か岡田式か、によって微妙に栽培の方法は違っていて、厳密に書いていくと難しくて細かい話になっていくので避けます。
もし興味があれば調べてもらえればいいんですが、けっこう深い話になっていくので本気の方にしかお勧めしません・・・。
大きく共通しているのは農薬を使わないことと肥料を使わないことでしょうか。
とにかく自然農法にもいろいろあって、

耕すのか耕さないのか、
草をどう処理していくのか、

には流派による違いがありますが、基本的な理念は同じような空気感をもっています。
理念についてスパッときれいにまとめるときには

自然尊重・自然規範・自然順応

という表現をされることが多いんですが、これだと堅苦しくて一歩引いてしまいますよね。
これをなんとかがんばって要約してみると

自然環境と永続的に共存するためになるべく負荷のかからないように考慮した農法
自然生態系を尊重してバランスをくずさないように田畑に農業生態系をつくろうとする農法

という表現になりますが、うーんやっぱり難しいです。
でもなんとなくイメージはつかめたでしょうか。
自然に優しい農法、とまで縮めてしまうと語弊を生んでしまいそうですが、簡単に言ってしまえばそういうことになります。
自然な農法、ではないことに特に注意していただければ、自然に優しい農法でも悪くないとは思います。
とはいえ。
自然農法という言葉に込められた歴史や想いを考えると、農業者の立場では難しい表現になってしまうのは避けられそうもありません。
このくらいでご勘弁ください。

自然農法の農産物を買う

自然農法の農産物を買いたいと思ったとして。
どこに売っているのか見当もつきませんよね。
もちろん自然農法に関係する団体をたどれば、自然農法の農産物を見つけることができますが、それはその団体を知っていればの話です。
ふつうは自然農法に関係する団体なんて知りません。
じゃあどうしたらいいのか。
自然農法農産物を買おうと思ったらどうしたらいいのか。
もっとも簡単なのはご存じインターネット検索です。

自然農法です!
と言って農家が農産物をホームページで売っていることはけっこうあります。
だからインターネットで検索するときは

自然農法 地域名

といったキーワードで検索してみると適切な検索結果が表示されるはずです。
たとえば「自然農法 愛知」といった感じです。
ただし。
自然農とか自然栽培といった似ているようで異なる農法を採用している農家が検索結果に出てくることも多いので、正真正銘の自然農法農家が見つかる保証はありません。
根気よく探してみてください。

自然農法農産物を買うときに気をつけるべきこと

購入するときに気を付けてほしいことが二つあります。
ひとつは。
自然農法といっても流派があり栽培方法には幅があるので、自分の希望をあらかじめはっきりさせておく必要があるということです。
なんとなく自然に優しい農法の野菜が欲しいわ、ということであれば特に気にする必要はないんですが、厳密に「耕さず肥料も入れず」栽培を希望するのであれば、それを明示している農家を探さなければ納得できる農産物を買うことができません。

もうひとつは農家によってばらつきが大きいということ。
農薬や化学肥料を使わない、いわゆる有機栽培全般に言えることなんですが、技術的なノウハウが業界全体でまだまだ浅いのでマニュアル化が進んでおらず、農家ごとに生産される農産物の品質が大きくばらついています。
ものすごくイイものをつくれる農家がいる一方で、こんなもの売っていいの?と疑いたくなるようなものを提供している農家もいるということです。
購入するみなさんにとっては悲報ともいえる状況ですが、そういうものだと割り切っておみくじでも引く感覚で農家を探してもらえればと思います。

とにかく。
自然農法という表現で自己アピールをしている農家は、栽培に強いこだわりを持っています。
もしかしたら味に自信を持っているかもしれません。
安全性に絶対の自信を持っているかもしれません。
そういった強いこだわりを持つ農産物を買うのであれば、買う側も強いこだわりを持っていなければ自然農法のよさを受け止めきれない可能性があります。
なぜ自然農法の野菜が欲しいのか。
なぜ自然農法の米じゃなければだめなのか。
それらの問いに対して明確な回答を出せるかどうか。
ここが自然農法農産物を求めるべきかどうかの境界になると思います。

参考になれば幸いです。

関連記事