クレオパトラが愛したモロヘイヤ

夏に食べる葉野菜といえばモロヘイヤ。
というくらい世間に浸透してきた野菜ですが、モロヘイヤが日本で本格的に栽培されるようになったのは1980年代。
栄養価が非常に高く、健康志向の高まりとともに認知されて広がってきたという経緯があります。
そんなモロヘイヤについて詳しくみていきましょう。

モロヘイヤ
モロヘイヤという名前はアラビア語の「molokheiya」からの外来語です。
エジプトには、重病をわずらったエジプトの王様がモロヘイヤのスープを飲んだら回復したという故事があり、アラビア語で「王様の野菜」を意味する「ムルキーヤ」がモロヘイヤの語源となっています。
現在ではモロヘイヤを栄養価の高さから「夏野菜の王様」などと表現することがありますが、モロヘイヤの語源となった逸話があったからそのように広まったとも言えます。


エジプトの王様が~と言っているあたり、かなり前から野菜として栽培されていることが予想できますが、実際はクレオパトラがいた時代、つまり約2000年ほど前からモロヘイヤは食用として栽培されていたことになります。
そのころから、モロヘイヤはモロヘイヤとして、今とそれほど変わらない姿で人間と関わってきました。
たいていの野菜が、もともと原種として野生で生きていた姿から人間の手によって品種改良をされ続けてきたのにたいして、モロヘイヤは原種そのものが今も受け継がれているわけです。
これはすごいことです。
たとえばトマトは真っ赤で大きな玉になるものがふつうに売られていますが、原産地で生きていたいわゆる原種のトマトはビー玉よりも小さなサイズで完熟しても赤くならなかったと言われています。
それを人間が、自分たちが食べておいしいように甘くなるように改良に改良を重ねて、おいしそうに見えるように赤くて大きいものを選抜してきたんです。
何百年、何千年もかけて。
たとえばキャベツは、もともと葉がしっかりと巻いて玉になるような植物ではなく、小松菜みたいに葉がすべて広がって育つような植物でした。
それを人間が長い年月をかけて葉が巻くものを選んでタネをとり育てて、いまのようなしっかり葉が巻いた玉になるキャベツができあがっています。
このように野菜は長い年月をかけて原種からかけ離れていくように品種改良されていることが多いのですが、モロヘイヤはほとんど変わらない姿で長く人々に愛されてきた貴重な野菜なわけです。

野菜でたくましく生きていた頃に姿そのままだということもあって、モロヘイヤは非常に生命力にあふれていて栄養価も高いです。
そのへんに勝手に生えてくる雑草は、アスファルトの割れ目でも根を伸ばしてたくましく育つくらい生命力が強いですが、モロヘイヤもそういう雑草に負けないくらいたくましいということです。

 

種に含まれる毒に注意

そんな素晴らしい野菜ですが、食べるときにはひとつ注意しなければならないことがあります。
花を咲かせたあとに出来てくるタネ、これに毒があるんです。
  モロヘイヤのさや3
平成8年に、農家が牛に実がついたモロヘイヤを大量に与えたところ、5頭中3頭が死亡するという事故がおこりました。
ほかにも食欲不振、起立不能、下痢などの症状が出ることもあります。
その後の調査により、モロヘイヤの種には強い毒成分ストロファンチジンが含まれていることが判明しました。
もちろん、種が含まれていたとしても人間が通常食べるような量で、毒成分が体に影響を及ぼすかどうかはわかりません。
牛には影響が出るけど鶏には影響がなかった、と種別によって影響力が違うという報告もあるくらいです。
人間にはどうかということについては研究結果が見つからないためなんとも言えません。
毒性に対する耐性には個人差がありますし、どれくらいの量から安全だ危険だとは言い切れませんが、水でも塩でも多量に摂取すれば毒にもなりうることを考えれば、過剰に気にするのはどうだろうかとは思います。

とはいえ、気をつけるに越したことはありませんから、実の部分があれば取り除いておくことをお勧めします。
ただし。
どのくらいのサイズから取り除けば、ということについては明言できるデータがありませんので食べる方の判断によってしまう、という頼りない現状を御了承下さい。
スーパーで購入するものについては実がついていることはほとんどないと思いますが、個人の農家から購入するときにはモロヘイヤの生育状況や収穫時期によって実がついてしまうことがあります。
モロヘイヤのさや
このくらい小さければよほど大丈夫だと思います。
もちろん気になる方はとったほうが安心です。

モロヘイヤのさや2
このくらいになったらしっかりとタネが出来てしまっていますので取り除く必要があります。
もちろん、葉の大きさと同じくらいのサイズの大きなサヤをつけて出荷する農家はほとんどいないですけどね・・・。

安全性がどうこうというよりも、どこまでやれば自分は納得できるのか、もしくは安心できるのか。
ということをモロヘイヤのタネは教えてくれている気がします。

 

栄養価について

モロヘイヤは非常に栄養価の高い野菜として有名です。
老化の原因である活性酵素の働きを抑える効果のあるカロテンの含有量が野菜の中ではトップクラス。
ぬめり成分のムチンが胃壁を保護してくれるので、消化不良や食欲不振を防ぎます。
ビタミンB1、B2、B6も豊富に含まれ、たんぱく質の再合成を助けて疲労回復に役立ちます。
ビタミンEの含有量は野菜の中ではナンバー1、強い抗酸化作用があり血液を綺麗にして血栓を防ぎます。
ヘモグロビンの材料となる鉄に加え、鉄の吸収を高めるビタミンCも豊富に含まれているため、貧血の予防に効果的。
などなど。
大量に食べるような野菜ではありませんから、モロヘイヤだけで必要な栄養をすべて摂るというのは無理がありますが、少量で高い効果が期待できる素晴らしい食材です。
食欲が落ちたり暑さでバテたりしやすい夏にぴったりの野菜、それがモロヘイヤです。