鮮度の秘密 野菜を長く保存するための原理原則

新鮮な野菜は美味しい。
よく言われることですが、新鮮であるとはどういうことなのか。
新鮮なら美味しい、とはすべての野菜に言えることなのか。
新鮮さを保つにはどうしたらいいのか。
鮮度の落ち方には野菜によって違いがあるのか。
このような疑問について、改めて向き合ってみたいと思います。

 

野菜にはいろいろな種類があります。
小松菜、水菜、キャベツ、ネギなど葉を主に食べる葉菜類(ようさいるい)。
トマト、ナス、ピーマンなど樹にぶらさがっているものを収穫する果菜類(かさいるい)。
大根、人参、ゴボウなど根っこを食べる根菜類(こんさいるい)。
ジャガイモ、里芋、サツマイモなど芋を食べる芋類(いもるい)。
エダマメ、エンドウ、ソラマメなどの豆類(まめるい)。

野菜はこのように、収穫して食べる部位によって分類されることが多いです。
葉を食べるから葉菜類。
樹にぶら下がった果実を食べるから果菜類。
根を食べるから根菜類。
というように。
おおざっぱにみれば、この分類がそのまま鮮度や保存に関わってきます。
葉菜類は鮮度が落ちやすいということが言えます。
果菜類は葉菜類ほどではないけれど徐々に鮮度が落ちていく。
根菜類はわりと長期保存が効きやすい。
といった感じです。

このような鮮度の落ちやすさというのは、あくまで結果です。
収穫したあとの野菜に、なんらかの変化があって、その結果として新鮮さが失われる。
新鮮さが失われる原因があるということです。
この原因がわかってくると、新鮮さをどのようにすれば保つことができるのかが分かってきます。
そして。
食卓を任されている主婦にとって、冷蔵庫の中身を完璧に把握している主婦にとって、家計をしっかりとやりくりしている主婦にとって、野菜を一日でも長く保存するのは非常に重要な問題です。
鮮度の秘密を知ってぜひ日常にお役立て下さい。

 

生長点をもつ葉菜類

結論から言ってしまえば、鮮度低下を左右する要素は2つ
温度と生長点
です。
まずは生長点について説明していきます。

生長点/成長点とはなにか。
(ここでは以降、生長点で記載していきます)
生長点って分かりますか?
名前の通り生長をする点のことですが、茎や根の先端にあって活発に分裂して新しい組織を作る部分のことです。

生長点解説
植物はこの生長点がとくに旺盛に動きます。
土から芽を出した植物は、さいしょに双葉を開かせて、そのあとに本葉を広げていきます。
その後もどんどん茎や葉を伸ばして大きくしていきますが、かんたんにいえば新しい葉をどんどん生み出している場所に生長点があります。

水菜
野菜によっては、この生長点をもったまま収穫されるものがあります。
小松菜、水菜、キャベツ、レタス、ブロッコリー、ネギなど。
わかりますよね、葉菜類です。
葉菜類は、生長点を持ったまま収穫される。
そして、収穫されたあとも生長を続けようとします。
でも本体から切り離されているもしくは根がないから、新しく体をつくるための栄養補給ができません。
結果的に、栄養補給がないまま生長してしまうことで体力を消耗するというわけです。
生長点があるせいで蓄えているエネルギーを使ってしまう。
それが鮮度低下、という表現になっているわけですね。
わかりますか?
葉菜類の鮮度が落ちやすいのは、生長点を持っているからなんです。

よくキャベツやレタスは芯を取っておくと新鮮なまま長持ちするって言われますよね。
あれは生長点を取ってしまうことで余計なエネルギー消費をしないようにしているんです。
理にかなっています。
でも。
生長点というのは植物の体のなかでもっとも生命力にあふれる部位。
できればその切り取った芯を捨てないで食べることをお勧めします。

 

根菜類にも生長点がある

再生ニンジン
(画像参照:メールのプロの独り言より)
根菜類も、葉菜類と同じように生長点を持っています。
人参や大根を見ているとよくわかりますが、葉をカットして売られているものを買ってきても、冷蔵庫で長く使わないで置いたままにしておくと新しく葉が出てきたりしませんか?
皿に水を張ってそこに頭だけカットした大根や人参を浸けておくと、何週間か経って葉が伸びてきて食べられるという噂の実験、したことありませんか?
それは生長点を持っているという証拠です。
根菜類は、葉菜類と同じように生長点を持っています。
生長点を持っているのに根菜類がなぜ長期保存が出来るかというと、それは単純に蓄えられているエネルギーが大きいから、という理由によります。
茎や葉に蓄えられているエネルギーにくらべれば、ど太い根っこに蓄えられたエネルギーは膨大なものです。
ちょっと葉を新しく作ったくらいで弱ってしまうような根ではありません。
葉菜類との大きな違いがここにあります。
だから根菜類は、生長点を持っていながらも鮮度低下には鈍感です。

 

果菜類だけはちょっと違う

果菜類カゴ盛り
それでは果菜類はどうかというと。
収穫した果実には生長点がありません。
トマト、ナス、ピーマン、キュウリ、オクラ、カボチャ、ズッキーニ。
これらの野菜を想像してみてほしいのですが、生長点らしきところは見つかりません。
放っておいても新しく芽が出てくるということはありません。
それもそのはず。
これらの果実は、もともと本体から切り離されるべきものだからです。
花が咲いて、受粉してそのあとに出来た実が大きくなったものがトマトでありナスです。
だからトマトやナスの果実のなかにはタネがあり、タネの入った果実が地面に落ちて新しい場所で芽吹いたり、動物に運んでもらって芽吹いたり、子孫を残して命をつないでいくための役割を持っています。
そんな果実は、もともと本体から離れていくために育ったものだから、そこに生長点という違った役割を持つものは含まれていないんです。
生長点のかわりにタネを持っている、という感じでしょうか。

それじゃあ、生長点がないんだから長期保存できるのでは?
って思いますよね。
これは半分正解ですが、半分は違っています。
生長点があることによるエネルギー消費はありませんが、完熟に向かおうとする変化によるエネルギー消費があるんです。
たとえばキュウリやナス、ピーマンは花が咲いてから1~2週間程度で育った未熟なものを収穫してしまいますが、これらを収穫せずにそのまま放っておけばどんどん大きくなり色が変化して、タネが完全に出来上がった完熟状態になります。
完熟キュウリ
(黄色いのは完熟キュウリ)
この動き、じつは未熟なものを収穫したあとにも起きるんです。
緑色のピーマンがどんどん色づいて赤くなっていく。
緑色のキュウリがどんどん色づいて黄色くなっていく。
収穫されてしまったキュウリやピーマンでも、子孫を残すためになんとか果実を完熟させようと努力を続けるんです。
そのためにエネルギーを使ってしまう。
というわけです。
もちろん、収穫してしまったキュウリは栄養補給の経路が断たれてますから、さらに大きくなることはありませんし黄色くなるほどの完熟には辿りつけません。
そこに向かおうとしてしまう、そのためにエネルギーを消費してしまう。
という動きを見せるだけです。

ここで。
気になる野菜がありませんか?
収穫したときにすでに完熟しているトマトやカボチャです。
畑で育っているときに完熟するまで本体にぶら下げておいて、しっかりと色づいて完熟してから収穫する。
これらの野菜は、生長点がなく完熟に向かうためのエネルギー消費もありません。
つまり長期保存ができる貴重な野菜なんです。
これって・・・。
果物と同じです。
リンゴやみかん、ブドウやナシなど。
そしてスイカやメロン。
スイカやメロンは果物として売られていることが多いですが、植物生理学上は野菜に分類されています。

ということで。
トマト、カボチャ、スイカ、メロン。
これらの野菜は、完熟野菜です。
食べたあとに残ったタネを土に埋めると芽が出てくる、命をつなぐことができる野菜です。
あの甘さからも分かるとおり、果物に近い野菜です。
子どもたちが喜ぶ野菜、とも言えます。

 

まとめ

というわけで。
野菜がもつ生長点と鮮度との関係について説明してきました。
簡単にまとめると
葉菜類は生長点を持っているためにエネルギー消費が激しい。
根菜類は生長点を持っているが蓄えたエネルギーが大きいため消費に耐えられる。
果菜類は生長点を持っていないが完熟に向かうためにエネルギーを消費する。

このようになります。
ちなみに豆類は果菜類に、芋類は根菜類に含めて考えてください。

生長点のことだけで記事が長くなってしまったので、次回は鮮度の深い関係があるもうひとつの要素
温度
について書いていきたいと思います。
お楽しみに。

 

 

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