単位面積あたりの農薬使用量が世界でトップクラスの日本

農薬使用量
日本では単位面積あたりの農薬使用量がアメリカの7倍だといわれています。
えっ?
7倍も農薬を使っているの?
日本の農産物って危険なの?
と思ってしまいますよね。
国産は安全だと思っていたのにショック、やっぱり無農薬で育てられたものを買わなくちゃ。
と考えてしまいますよね。

でもちょっと待ってください。
ただ単に「日本の農家は農薬を使いすぎだ!」と声をあげる前に、なんで日本はアメリカの7倍もの農薬を使っているのかを考えてみる必要があります。
真面目で勤勉だと言われる日本人が、必要もないのに多量の農薬を使用するとは思えません。
あなたの周りにいる農家さんが、不必要な農薬をバンバン撒いていると思いますか?
そのへんで農作業をしている農家さんが、悪人面してドッカンドッカン見境なしに農薬を散布していると思いますか?
なにかしらの理由があるからこそ、多くの農薬を使うんです。
今回はこのことについて書いていきます。
アメリカの7倍 = 危険
という単純な発想ではなくて、なぜ7倍もの農薬を日本では使っているのかを冷静に考えることができるようになります。
なぜ日本では諸外国よりも多くの農薬を使っているのか。
このことについては、三つの側面から考えることができます。
●高温多湿だから
●農地集約型だから
●きれい好きだから
この三つです。

今回は、高温多湿だから農薬使用量が増えるという話をしていきます。
ぜひ最後までご覧ください。

高温多湿だから

日本の気候環境を頭に浮かべてみてください。
日本は、無農薬で栽培をするにはたいへん難しい気候なんです。
日本の気候は温帯に属しますが、高温多湿です。
動植物が快適に過ごしやすいため、多くの生き物が生存しています。
動物も、虫も、微生物もせめぎあうように共存しています。
そのなかには、野菜を育てるときに害になるような虫や微生物もいて、彼らが悪さをすることで野菜が病気になったり虫に葉を食べられたりするんです。
それは、欧米のように涼しくて乾燥している気候とは明らかに違います。
欧米ではあまり農薬をかけなくても病気や虫にやられないのに、同じように野菜を育てると日本では簡単に病虫害に遭ってしまう。
そういう気候の違いはあります。

もちろん日本の中でも北海道と沖縄ではまったく気候環境が違いますし、ヨーロッパでも南欧と北欧ではその気候はまったく異なります。
でも平均してみれば、日本の気候は欧米と比べれば高温多湿で、病気や虫が発生しやすい環境にあることはいえます。

そんななかで。
主食であるコメを、高温多湿な夏を利用して栽培しているんです。
これはもう農薬を使わざるを得ないという感じです。
小麦は涼しい気候を利用して育てられる作物なので、農薬をあまり使わないでも育てることができ、小麦を主食とする国々は農薬の使用は少なくなる傾向があります。
主食の違いだけみても、農薬の使用量に差が出るという状況ですね。

コメを主食としているだけで、必然的に農薬使用量が多くなってしまうということは言えます。

 

なぜ農薬を使うのかという根本的な問い

そもそも。
農薬を使うのはなぜかを考えたことがありますか?
なぜそれだけ多くの農薬を使わなければいけないのか、考えたことがありますか?

病気にならないように予防として。
病気になったときの病原菌を抑えるため。
虫がつかないようにブロックするため。
ついてしまった虫を殺生して野菜に被害が及ばないようにするため。

作物が病気や虫にやられてしまわないように、作物を守ってあげるために農薬を使うんです。
日本の気候で、病害虫が少ない欧米と同じように農薬を使用していたらどうなるか。
作物を守るために農薬を使う、という目的を果たせないことになりかねません。
作物を守るためには、虫や病気が多発する高温多湿の気候では農薬の使用が多くならざるをえない。
というのが、日本で農薬が多く使われている要因のひとつです。

諸外国の農薬使用量が日本にくらべて少ないから、それに日本も合わせなければいけない。
というのは暴論です。
そもそも気候環境が違うので、目的を果たすための農薬使用量は違って当然なんです。
そこを無視して農薬使用量を比較することは、なんの意味もないことを知ってください。

 

有機農家の存在

という話でしたが、無農薬野菜を買っている、もしくは食べている人にとっては興味のないことかもしれません。
使用量もなにも、私が求めているのは無農薬なんだから。
まあそうですね。
それはそうなんですが、無農薬で野菜を育てている農家として皆さんにここで知ってほしいことは

高温多湿の日本では、無農薬栽培が難しい

ということです。
日本の農薬使用量が多いということは、その気候では無農薬栽培が難しいことを意味します。
農薬をたくさん使用しなければ、商品としての作物が育てられないということです。
そんななかで。
あの手この手を駆使して、並々ならぬ勉強をして、なんとか無農薬での栽培を実現しているのが
有機農家
だということを知ってほしいと思います。
簡単ではない、ということを知ってほしいと思います。

 

次回は。
なぜ日本では諸外国よりも多くの農薬を使っているのか、について農地集約型農業をしているという点から見ていきます。

日本の農薬使用量が多いのは統計のトリック

どうぞお楽しみに。

 

 

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